里山活動への参加を促す現場の工夫:新規参加者のハードルを下げる具体的な方法
多くの里山活動団体が直面する課題
里山での活動を継続していく上で、多くの団体が共通して直面する課題の一つに「担い手の不足」があります。活動を長年続けてこられた方々にとって、若い世代や地域外からの新たな参加者をどのように迎えるか、そしてその方々に活動に興味を持ち続けてもらうかは喫緊の課題と言えるでしょう。
特に、初めて里山活動に参加を検討される方々にとって、活動内容が専門的に見えたり、体力的に大変そうだと感じられたりすることは、参加へのハードルとなり得ます。経験豊富な活動団体だからこそできる、新規参加者のハードルを下げる具体的な工夫について考えてみます。
参加への物理的なハードルを下げる
初めて里山活動に参加する際、参加者が不安に感じやすい点の一つに「どのような準備をすれば良いのか」があります。
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道具の準備: 里山での作業には、ノコギリや鎌、スコップなど、普段使い慣れない道具が必要になることがあります。これらの道具を一から自分で揃えるのは負担が大きいと感じる方もいるでしょう。団体で基本的な道具を用意し、貸し出しを行う体制を整えることは、参加者が手ぶらでも気軽に参加できる環境づくりに繋がります。また、道具の使い方が分からないという不安を解消するため、活動の最初に簡単な使い方講習を取り入れることも有効です。安全な使い方を丁寧に説明することで、参加者は安心して作業に取り組むことができます。
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服装や持ち物に関する情報提供: 里山での活動に適した服装や、持ってくると便利なものについても、事前に具体的に情報提供することが重要です。季節に応じた服装の例(長袖・長ズボン、滑りにくい靴など)や、水分、帽子、タオル、虫よけスプレー、雨具などの必要性を具体的に伝えることで、参加者は安心して準備ができます。ウェブサイトや募集案内に分かりやすいリスト形式で掲載すると良いでしょう。
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アクセスと移動手段のサポート: 活動場所が公共交通機関から離れている場合や、初めて訪れる場所である場合、集合場所へのアクセスは参加者にとって大きな負担となり得ます。最寄りの駅からの送迎を検討したり、乗り合いを推奨したりするなど、移動手段に関するサポートを提供することも参加を促す一助となります。集合場所を明確にし、地図や目印となる情報を丁寧に伝えることも基本ですが非常に重要です。
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作業時間と休憩の工夫: 体力に自信がない方や、里山での作業に慣れていない方にとって、長時間の作業は負担になります。作業時間を短めに設定したり、作業の途中でこまめに休憩時間を設けたりする工夫が有効です。また、休憩場所として、日陰や雨をしのげる場所を確保することも大切です。温かい飲み物を用意するなど、休憩時間を心地よく過ごせるような配慮も参加者の満足度を高めます。
参加への心理的なハードルを下げる
活動内容そのものへの不安や、参加者同士、あるいは団体メンバーとの人間関係への不安も、参加へのハードルとなり得ます。
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活動内容の明確な説明: どのような活動を行うのか、その活動が里山の再生にどのように繋がるのかを、参加者にも分かりやすい言葉で丁寧に説明します。作業の目的や意義を理解することで、参加者は自身の貢献を実感しやすくなります。募集段階で活動内容を具体的に伝えることはもちろん、当日の活動開始時にも改めて説明する時間を設けると良いでしょう。
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初心者向けの作業メニュー: いきなり専門的な伐採作業や土木作業をお願いするのではなく、枝拾い、草取り、落ち葉かき、道具の手入れ、記録係、写真係など、比較的体力的な負担が少なく、専門知識がなくても取り組みやすい作業メニューを用意することも有効です。参加者の体力や経験に合わせて無理のない範囲で作業をお願いすることで、「自分にもできる」という自信に繋がり、次回以降の参加意欲を高めることができます。
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サポート体制の構築: 新規参加者一人に対し、経験豊富なメンバーが一人つく、あるいは数人のグループに分かれて作業を進める際に、必ずベテランメンバーがサポートにつく、といった体制を整えることで、参加者は安心して作業に取り組むことができます。分からないことを気軽に質問できる雰囲気づくりが重要です。
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交流機会の創出: 活動後の昼食やお茶の時間など、参加者同士や参加者と団体メンバーがリラックスして交流できる機会を設けることは、心理的なハードルを下げる上で非常に効果的です。里山での活動を通して得られた共通の体験は、自然な会話を生み出します。楽しい交流は、「また参加したい」という気持ちを強く促します。
活動の魅力を実感してもらう工夫
一度参加した方に「また来たい」と思ってもらうためには、活動自体の魅力を伝え、自身の参加がもたらす成果を実感してもらうことが重要です。
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成果の共有: 一日の活動でどのように里山が変わったのか、具体的な成果を参加者全員で確認する時間を設けます。作業前と作業後の写真を比較したり、切り出した木材や集めた落ち葉を実際に見てもらったりすることで、自身の労力が具体的に里山の再生に貢献したことを実感できます。持ち帰り可能な成果物(薪、タケノコ、山菜など)があれば、参加者に提供することも喜ばれます。
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里山の知識や歴史の紹介: 活動の合間に、その里山に生息する植物や動物、昆虫について解説したり、地域の歴史や文化、里山との関わりについて話したりすることで、参加者の知的好奇心を刺激します。里山という場所への愛着や関心を深めることは、活動への継続的な参加意欲に繋がります。
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参加者の声に耳を傾ける: 活動後のアンケートや会話の中で、参加者の感想や意見を積極的に聞く姿勢を持つことが重要です。「大変だったこと」「楽しかったこと」「改善してほしい点」などを共有してもらい、可能な範囲で活動に反映させることで、参加者は「自分たちの声が大切にされている」と感じ、活動への主体性が生まれます。
まとめ
里山活動への新規参加者のハードルを下げることは、一見些細なことのように思えるかもしれません。しかし、道具の準備から当日のサポート、活動後の交流に至るまで、参加者の立場に立ったきめ細やかな配慮を行うことが、参加への第一歩を踏み出しやすくし、そして継続的な参加へと繋がります。
担い手不足という課題に対し、これらの「現場の工夫」を積み重ねることは、活動団体の活性化、ひいてはその里山の持続的な再生に不可欠な取り組みと言えるでしょう。成功事例は一つとして同じものはありませんが、これらの基本的な考え方を参考に、それぞれの団体の状況に応じた工夫を試みていくことが大切です。