里山活動の安全を守るために:リスク管理と具体的な備え
里山活動における安全管理の重要性
里山での活動は、自然と触れ合いながら地域に貢献できる、大変やりがいのある取り組みです。しかし、その活動の場である里山には、都市部や整備された場所とは異なる、様々なリスクが潜んでいます。予期せぬ怪我や事故を防ぎ、安全に活動を続けるためには、リスクを正しく認識し、適切な安全対策を講じることが不可欠です。安全管理は、単に事故を避けるだけでなく、参加者が安心して活動に参加し、活動そのものを継続していくための基盤となります。
里山活動に潜む主なリスクとその対策
里山での作業は、体力的な負担も伴い、多様な自然環境に直面します。ここでは、活動中に遭遇する可能性のある主なリスクと、それらに対する具体的な備えについて解説します。
1. 自然環境に起因するリスク
- 天候の変化: 山間部では天候が急変することがあります。
- 対策: 事前に天気予報を確認し、荒天が予想される場合は活動を中止または延期します。急な雨に備え、防水・防風機能のある服装や雨具を準備します。体温調節ができるように、重ね着できる服装を選びます。
- 地形・足場の悪さ: 未舗装の急斜面、ぬかるみ、落ち葉の下に隠れた石や木の根などが転倒の原因となります。
- 対策: 滑りにくい登山靴や長靴など、作業に適した丈夫な靴を着用します。足元をよく確認しながら移動し、無理な姿勢での作業は避けます。急斜面での作業は避けたり、安全なルートを選んだりします。
- 動植物: 毒を持つ植物(ウルシなど)や危険な生物(スズメバチ、マダニ、ヘビなど)との接触リスクがあります。
- 対策: 肌の露出を避け、長袖・長ズボン、帽子、手袋を着用します。虫よけスプレーを使用し、特にマダニ対策として、帰宅後は衣類をすぐに洗濯し、体をよく確認します。植生や生息生物について事前に学習し、注意すべき動植物を把握しておきます。
2. 作業内容・道具に起因するリスク
- 刃物・工具の使用: ノコギリ、ナタ、鎌、チェーンソーなどの使用は、切創事故のリ危険があります。
- 対策: 各道具の正しい使い方を習得し、使用方法を守ります。刃物は適切に研ぎ、安全な状態を保ちます。作業中は周囲の人との距離を十分に確保します。必要に応じて、安全ゴーグル、ヘルメット、作業手袋、チャップスなどの保護具を着用します。作業後には、道具を安全に片付け、保管します。
- 重量物の運搬: 伐採した木材や資材の運搬は、腰痛や落下による事故につながる可能性があります。
- 対策: 無理な体勢で持ち上げず、膝を使って重心を落とします。一人で運べないものは複数人で協力して運びます。台車や運搬具を積極的に活用します。休憩をこまめに取り、疲労を蓄積させないようにします。
- 伐採・枝打ち: 木の倒れる方向の予測ミスや、落下物による事故が考えられます。
- 対策: 伐採する木の傾きや周辺の状況をよく観察し、安全な倒木方向を定めます。作業エリアに第三者が立ち入らないよう注意喚起や監視を行います。チェーンソーなど危険度の高い作業には、十分な経験や資格を持つ人があたります。ヘルメットは必須です。
3. 体調・人的要因に起因するリスク
- 熱中症・低体温症: 暑い時期の活動は熱中症、寒い時期は低体温症のリスクがあります。
- 対策: 十分な水分と塩分をこまめに補給します。帽子を着用し、直射日光を避けます。無理のない作業ペースを保ち、定期的に休憩を取ります。寒い時期は重ね着で体温調節をし、濡れた衣類は早めに着替えます。
- 疲労・体調不良: 体力の低下は判断力の鈍化や不注意につながります。
- 対策: 事前に体調を確認し、体調がすぐれない場合は無理に参加しません。各自の体力やペースに合わせた作業分担を行います。定期的に休憩を取り、十分な休息をとります。
- コミュニケーション不足: 作業指示が不明確だったり、危険箇所に関する情報共有が不足したりすると事故につながります。
- 対策: 作業開始前に必ずミーティングを行い、その日の作業内容、役割分担、危険箇所、注意事項を全員で共有します。作業中も声かけを怠らず、連携を密に取ります。
安全管理を活動に組み込むために
安全管理は、特定の誰かだけが行うのではなく、活動に参加する全員が意識すべきことです。
- 作業前点検: 使用する道具や作業場所の状況を、作業前に必ず確認する習慣をつけます。
- 安全ミーティング: 毎回の活動開始時に、その日の作業に関わるリスクと対策について、短時間でも良いので必ず話し合う場を持ちます。
- 「気づき」の共有: 作業中に「危ない」「気になる」と感じたことがあれば、遠慮なく周囲に伝え、情報を共有します。
- 無理のない計画: 体力や参加人数を考慮し、無理な作業計画を立てないことが重要です。難しい作業は専門家の助けを借りたり、計画を調整したりします。
- 緊急時の対応: 事故が発生した場合の連絡方法(連絡網、緊急連絡先)や、応急処置の方法について、事前に確認しておきます。救急セットを常備することも大切です。
まとめ
里山活動は、豊かな自然の中で行われる素晴らしい取り組みですが、安全への配慮は決して疎かにできません。ご紹介したようなリスクと対策を日々の活動に組み込み、参加者一人ひとりが安全意識を持つことが、活動を長く、そして楽しく続けていくための鍵となります。安全対策をしっかりと行うことで、里山での活動はより充実したものとなるでしょう。