少人数・高齢化でも里山を守る:活動の継続力を高める具体策
里山活動を継続する上での課題
地域における里山活動は、豊かな自然環境を保全し、生物多様性を育む上で重要な役割を果たしています。しかし、多くの地域で活動の担い手が高齢化し、参加者も減少傾向にあるという共通の課題に直面しています。かつてのように大人数で体力的に負担の大きい作業をこなすことが難しくなりつつある状況で、いかにして活動を維持し、次世代へと繋いでいくかが問われています。
活動の継続力を高めるためには、現在の参加者が無理なく、そして意欲を持って活動に参加し続けられるような工夫が必要です。それは単に作業の効率化を図るだけでなく、活動全体の計画、進め方、そして参加者同士の関わり方を見直すことにも繋がります。ここでは、少人数・高齢化が進む中でも里山活動を継続していくための具体的な方策について考えます。
活動計画の見直しと柔軟な設計
里山活動の継続力を高める最初のステップは、現実的な活動計画を立てることです。これまでの成功体験に基づいた計画も重要ですが、現在の参加者の状況を考慮し、無理のないペースで進められるように調整が必要です。
- 年間計画の再検討: 体力を要する作業の頻度や規模を見直し、分散させることを検討します。例えば、広範囲の間伐作業を一度に行うのではなく、複数年に分けて行う、あるいは特定のエリアに絞って集中的に行うなど、優先順位を明確にすることが重要です。
- 1日の作業計画: 作業時間内に十分な休憩時間を設けることはもちろん、作業内容を細分化し、短時間で達成感を得られるような小さな目標を設定します。例えば、午前中に木材搬出、午後に枝払いといったように、異なる種類の作業を組み合わせることも有効です。
- 天候や参加者の体調への配慮: 当日の天候や参加者の健康状態に応じて、臨機応変に作業内容を変更できるよう、複数の選択肢を準備しておきます。無理な作業は事故のリスクを高めるだけでなく、参加者のモチベーション低下にも繋がります。
作業内容の工夫と効率化
限られた人数と体力の中で最大限の成果を上げるためには、作業内容自体にも工夫が必要です。
- 作業の分担と外部委託: 全ての作業を自分たちだけで抱え込む必要はありません。例えば、重機の使用や特殊な技術が必要な作業については、専門業者に委託することも選択肢の一つです。これにより、参加者は体力的に負担の少ない作業に集中できます。
- 機械や道具の積極的な活用: チェンソーや刈払機、運搬車などの機械を適切に活用することで、作業効率を大幅に向上させることができます。ただし、機械の安全な使用方法に関する知識と技術習得は不可欠であり、定期的な講習会の実施や熟練者による指導体制の整備が重要です。また、手ノコやナタといった手道具についても、軽量で使いやすいものを選ぶなどの工夫も効果的です。
- 作業内容の多様化: 里山活動には、体力的な作業だけでなく、植物や昆虫の観察記録、写真撮影、イベントの企画運営、広報資料作成、会計処理など、様々な役割があります。参加者一人ひとりの得意なことや関心、体力レベルに応じた役割分担を行うことで、より多くの人が活動に参加しやすくなります。体力的な作業が難しくなっても、他の分野で貢献できる道を示すことが、参加者の離脱を防ぎ、活動へのエンゲージメントを維持することに繋がります。
コミュニケーションと役割分担の重要性
活動を継続するためには、参加者間の良好なコミュニケーションと適切な役割分担が欠かせません。
- 参加者間の相互理解: 定期的なミーティングや懇親の機会を設け、参加者同士が互いの体調や事情を共有しやすい雰囲気を作ることが大切です。それぞれの「できること」「できないこと」を率直に話し合える関係性が、無理のない活動計画の基盤となります。
- 個々の能力を活かす役割分担: 参加者それぞれの経験やスキル、体力レベルを把握し、最も能力を発揮できる役割を担ってもらいます。例えば、経験豊富な方は危険を伴う作業の指導や安全管理、体力に自信のある方は運搬作業、細かい作業が得意な方は道具の手入れや修繕、PC操作ができる方は記録や情報発信といったように、適材適所を図ります。
- 新しい担い手との連携: 若い世代や地域外からの参加者を迎える際は、これまでの活動の歴史や技術を丁寧に伝えるとともに、彼らの新しい視点やスキル(デジタル活用、デザインなど)を積極的に取り入れる姿勢が重要です。経験豊富な世代が持つ「知恵」と、新しい世代が持つ「力」や「発想」を組み合わせることで、活動の幅を広げ、継続性を高めることが期待できます。
まとめ:無理なく楽しく、長く続けるために
少人数・高齢化が進む状況での里山活動は、確かに様々な困難を伴います。しかし、それは活動を諦める理由ではなく、むしろ活動のあり方を見直し、より効率的で、より多くの人が参加しやすい形へと進化させる機会と捉えることができます。
重要なのは、活動を「完璧に管理された里山」を目指すことだけに固執せず、「無理なく、楽しく、長く続けること」に主眼を置くことです。参加者一人ひとりが、自身のペースで、自身の能力を活かして貢献できる場であること。そして、活動を通じて得られる自然との触れ合いや、仲間との交流そのものを楽しめること。そうした要素が、活動の継続力を支える最も強固な基盤となります。
他の地域でも、様々な工夫を凝らして里山活動を継続している事例が多く存在します。そうした事例から学び、自身の活動に取り入れられるヒントを探ることも、大いに参考になるでしょう。未来に向けて、地域の大切な里山環境を守り育んでいくために、今できることから一歩ずつ、活動の継続に向けた工夫を実践していくことが求められています。