里山活動で出る竹材の処理・活用法:効率的な粉砕と堆肥化の現場事例
里山における放置竹林問題と竹材処理の課題
多くの里山では、手入れが行き届かなくなった竹林が拡大し、生態系や周辺環境に影響を与えています。里山活動において、こうした放置竹林の整備は重要な作業の一つですが、伐採した大量の竹材の処理が大きな課題となります。そのまま放置すれば景観を損ね、乾燥すれば火災のリスクも高まります。焼却処分は環境への負荷や煙の問題があり、場所や時期に制約があります。
こうした課題に対し、近年注目されているのが「竹材の粉砕」と、粉砕した竹チップの「堆肥化」による有効活用です。これは単にゴミを減らすだけでなく、地域内で資源を循環させる持続可能な取り組みと言えます。本稿では、里山での竹材処理における粉砕と堆肥化の具体的な方法や、現場での工夫についてご紹介します。担い手不足が進む中で、いかに効率的に作業を進め、竹材を価値ある資源に変えていくかが、里山活動を持続させる鍵となります。
竹材の粉砕方法とその選択
伐採した竹を粉砕することで、体積を大幅に減らし、運搬やその後の活用が容易になります。粉砕方法にはいくつかの選択肢があります。
1. 手作業での粉砕・細断
竹を鉈(なた)や鋸(のこぎり)で細かく割ったり切ったりする方法です。特別な機械は不要ですが、時間と労力が非常にかかります。特に硬い根本部分は作業が困難で、大量の竹を処理するには向きません。
2. 機械を使った粉砕(チッパーシュレッダー)
竹材を粉砕する専用の機械をチッパーシュレッダーと呼びます。里山活動では、主に以下のタイプが使用されます。
- 小型チッパーシュレッダー: 持ち運びが比較的容易で、軽トラックなどに積載できます。家庭用から業務用のエントリーモデルまで多様な製品があり、エンジン式や電動式があります。里山の現場まで持ち込んで作業することが多い場合に適しています。細い竹や枝の処理に向いていますが、太い竹や硬い節の処理能力は機種によって異なります。
- 中型・大型チッパーシュレッダー: より強力なエンジンを搭載し、一度に大量の竹材を高速で粉砕できます。太い竹も処理可能ですが、本体が大きく重いため、現場への運搬には工夫が必要です。作業場所を限定し、そこに竹材を集めて一括で処理する場合に適しています。購入費用も高額になる傾向があります。
機械を選定する際は、処理したい竹の量や太さ、現場への運搬手段、予算、メンテナンスの手間などを考慮する必要があります。複数の団体で機械を共同購入したり、専門業者に処理を依頼したりすることも選択肢となります。
粉砕した竹チップの活用法:堆肥化を中心に
粉砕した竹チップは、様々な用途に活用できますが、里山活動で実践しやすい方法として「堆肥化」があります。竹チップを土壌改良材として畑や田んぼに活用することで、地域の資源循環を促進できます。
竹チップ堆肥の作り方
竹は炭素率が高く、そのままでは分解に時間がかかります。効率よく堆肥化するには、窒素源や水分を加えて微生物の働きを促す必要があります。基本的な手順は以下の通りです。
- 材料の準備: 粉砕した竹チップを用意します。チップの大きさは、細かすぎると酸欠になりやすく、粗すぎると分解に時間がかかるため、数センチ程度が目安です。他に、米ぬか、油粕、鶏糞、牛糞などの窒素源となる材料と、適度な水分が必要です。
- 混合: 竹チップに窒素源を混ぜ合わせます。竹チップ10に対して、米ぬか1程度、または鶏糞などを加えて窒素率を調整します。水も加え、全体が均一に湿るように混ぜます。握って塊になり、崩すとほぐれる程度が目安です。
- 積み込み: 材料を積み上げて堆積させます。温度が上がりやすいように、ある程度の大きさ(例:幅・高さ1メートル程度)に積み上げます。
- 切り返し: 定期的に(目安として数週間〜1ヶ月に一度)堆積物を混ぜ返します。これにより酸素供給が促進され、微生物の活動が活発になります。発酵が進むと中心部の温度が50℃以上に上昇します。
- 熟成: 切り返しを続けながら、完全に熟成するまで数ヶ月から半年程度待ちます。カサが減り、竹チップの形が崩れて土のような状態になれば完成です。
竹チップ堆肥のメリット
竹チップ堆肥は、土壌の団粒構造を促進し、保水性や排水性を改善する効果があります。また、土壌微生物を活性化させ、植物の生育に適した土壌環境を作るのに役立ちます。地域の資源である竹を有効活用することで、外部から購入する堆肥の量を減らすことにもつながります。
現場での工夫と事例
里山活動の現場では、竹材の処理や運搬、堆肥化の場所確保など、様々な課題に直面します。
ある地域では、年に数回、複数の団体や地域住民が共同でチッパーシュレッダーを使った竹の粉砕作業日を設けています。機械を共有することでコストを抑え、人手を集めることで効率的に大量の竹を処理しています。
また別の地域では、粉砕場所を整備し、そこで集中的に竹チップを製造。完成した竹チップ堆肥は、地域の農家や家庭菜園に取り組む人々に配布・販売することで、活動資金の一部を確保したり、地域内の交流を深めたりする取り組みを行っています。
傾斜地からの竹材の運び出しには、簡易的なモノレールや滑車を活用したり、運びやすいサイズに事前に切断したりするなど、体力的な負担を軽減するための工夫が見られます。
課題と今後の展望
竹材の粉砕・堆肥化に取り組む上では、機械の維持管理費用、作業時の騒音や粉塵対策、安全な作業環境の確保といった課題もあります。また、堆肥化には時間と手間がかかるため、作業効率をいかに高めるか、継続的な人手をどう確保するかが重要です。
これらの課題に対し、行政の補助制度を活用した機械導入、地域住民への情報提供や講習会の開催、ITツールを使った作業スケジュールの共有など、様々なアプローチが考えられます。
里山活動における竹材の効率的な処理・活用は、放棄竹林問題の解決に貢献するだけでなく、地域資源の循環、土壌の改良、そして新たな地域内連携を生み出す可能性を秘めています。これらの取り組みは、里山活動の持続可能性を高める上で、今後ますます重要になると考えられます。